日本繊維産業連盟より、「繊維産業における責任ある企業行動ガイドライン」が発行されました。ILOと日本繊維産業連盟(JTF)は、繊維産業の責任ある企業行動促進に向けた協力覚書を2021年秋に締結し、ILOとJTF、また経済産業省がオブザーバーとして参加するプロジェクトチームにより、繊維産業の企業がデュー・ディリジェンスにより取り組みやすくするためのガイドラインを策定してきました。
ガイドラインの構成は次のとおりです。
第一部:ガイドラインの目的・概要
第二部:受注者としての立場である中小・小規模企業が確認すべき事項の例示
第三部:サプライチェーンを管理する発注者の立場で理解すべき事項の概説
第四部:第二部、第三部で示した事項についての確認及び全体手続きの実行プロセスのステップ別解説
特に第二部では、日本の繊維産業が抱えるリスクが多いと想定される、「労働者の人権に関する個別の課題」(P21-)として、(1) 強制労働、(2) 結社の自由・団結権・団体交渉権、(3) 差別、(4) 児童労働、(5) ハラスメント、(6) 外国人労働者、(7) 労働安全衛生、(8) 賃金、(9) 労働時間が挙げられており、各課題における行動規範や、法令上の定義、リスク要因などを理解できる内容になっています。また、別冊「チェック項目例とリスク発見時の対処法の例について」は、具体的なチェックリストと対応事例で取り組みを確認できるツールとなっています。
例えば、チェック項目の児童労働においては、以下のように、自社や取引先でのリスク確認の方法について、体制づくり、労働者からの聞き取りや相談窓口の設置、関係機関との連携なども提案されています。
雇用時に労働者の年齢を確認できる、信頼性のある適切な体制を整えているか?
18歳未満の労働者に危険な業務に該当する労働を行わせないよう、各国法で定められる「危険な業務」の内容を把握しているか?
間接取引先および委託加工先の家内労働を含む取引先における児童労働のリスクについて確認する際は、取引先使用者による隠蔽を防ぐため、取引先企業で働く労働者や、労働組合・NGO等へのインタビューを実施しているか?
児童労働に対する意識を啓発するため、児童労働の定義、最低就業年齢、禁止される危険な業務の具体的内容、児童労働が発覚した場合に報告できる相談窓口などを規定した方針を策定し、取引先にも周知しているか?
このガイドラインは、繊維・ファッション業界に多い中小規模の企業に使いやすく配慮され、人権デュー・デリジェンスの具体的な策を構築するための、自社にどのような人権リスクがあるかを特定・把握するプロセスにおいて非常に有用な内容となっています。
ACEは中小企業にとって実用的であるこのガイドラインの発行を歓迎するとともに、企業が人権デューデリジェンスに取り組みやすい環境を整えるべく、引き続き政府、関連省庁始め、各ステークホルダーへ働きかけをしてまいります。 人権リスクの特定・把握、そしてその後の具体的なプロセスへ向けて、企業の皆さまにはぜひこのガイドラインをご活用いただきたく思っております。
下記リンク先のウェブページ下部に、ガイドラインおよびチェックリストをダウンロードできるページへのリンクがあります。https://www.ilo.org/tokyo/whatsnew/WCMS_852597/lang--ja/index.htm
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